Story - 01
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漆とは
漆とはウルシの木から採れる樹液のことである。
ウルシの木は、10年から15年かけて成長し、その樹液は 一本の木から、たった200mlしか採取できない。
人々は山でウルシの木を育て、その樹液を恵みとして生活に役立ててきた。人間と漆はその関係を果てしなく長い間、続けてきた。

奇跡のような漆の特性
漆は塗り、研ぎ、硬化を繰り返し何層も塗り重ねる。このプロセスを経てできあがった漆の塗膜はとても頑丈であり、化学的にも安定していて非常に耐久性が高い。
また漆は塗面を堅牢に保持する働きを持つ。日本では世界最古の漆が 9000年前の縄文時代の遺跡から分解されずに色鮮やかな状態で出てきている。これはもともと植物である漆が微生物によっても分解されないという性質を意味する。
想像をはるかに超える耐久性、断熱性、防腐性を備え、酸やアルカリ、 アルコールにも強く、抗菌、殺菌作用もあり、今も漆に勝る合成塗料は開発されていないという。さらに漆は接着剤としても優れており、今や国外でも注目が広がる 「金継ぎ」にも漆が使用されることから、その特性への関心は世界に広がっている。

漆を塗る意味
かつて漆器は、海外では”JAPAN”と呼ばれ、日本を代表する伝統工芸としてその名を馳せ、その技術と美しさと共に発展を遂げてきた。また漆は国宝や重要文化財の修復にも使用され、日本の歴史と芸術文化の継承にも大いに関わってきた。
しかし、漆文化が始まったとされる縄文時代は、漆は美しさや崇高さを表現する芸術品を彩るものではなく、漆の施しにより大切な物を維持し続けていこうというシンプルな思いが主だったはず。
日々、新しい物を生み出す現代。どの時代のどんな物も、それらは私たちの歴史であり、すべてに存在する理由と価値がある。しかし、実際は世界は行き場のない物に溢れ、それらが地球環境に負荷をかけ続けている。
デザインが古く時代に合わないもの、 傷や欠けなどで価値が低くなってしまったもの、 売場に辿り着けなかったもの、 捨てようにも捨てられずどこかにしまいこまれているもの、など。
そのような物へ漆を施すことによって得られるのは、外見の更新による生まれ変わりだけではない。貴重な木の樹液である漆により、前述した通りの耐久性、断熱性、防腐性により壮大な時間を生きる可能性を得る。また漆は時間の経過と共に塗面をさらに硬化させ、その色はより深みを増し、艶はさら輝きを増す。



